新聞の欄外に書いてある「●版」とは?く

一般紙やスポーツ紙を読んでいると、よくわからない記号が書いてあることがありますよね。特に欄外に書いてある「●版」は何を意味しているのかご存知ですか。「版」とは、簡単にいうと新聞が作られた時間帯のことです。今回は、新聞記者を志望している方は参考になる話になるでしょう。

30秒でわかる要点説明
  1. 版=いつ作られた新聞なのかを知る目安のこと
  2. 版制に付く数値は各社異なる
  3. ▲や●などの記号がついている場合は、注釈みたいなもの
  4. 初版(最初の締め切り)の新聞は、印刷所から最も遠い地域に届けられる
  5. 地方在住なら最新ニュースが読める県紙、大都市圏なら内容充実+情報も新しい全国紙を選ぶのがベター

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版とは「新聞制作の時間帯」

Efraimstochter / Pixabay

新聞制作の締め切り時間は全て同じではなく、各社によってまちまちで秘密とされています。

回数も少ないところでは1回、多いところでは3回くらい設定しているのではないでしょうか。

新聞は通常、電車やトラックで運ぶため、販売店までの輸送に時間がかかることは何となく想像できるでしょう。みなさんが起床する時間帯に新聞が手元に届くようにするには、新聞社を刷る印刷工場から遠ければ遠いほど、締め切り時刻を早く設定しないといけませんよね。

そこで、新聞各社は「●県に朝刊を時間通り届けるには、●回目の締め切りに間に合わせなければいけない」などと逆算して締め切り時間を設定しているのです。

版制の隣につく▲や●は注釈的なも

新聞の版制 12版の朝日新聞。▲とついているのは統合版であることを示す

いままでの文を読んでくると、版制の仕組みについて少しは理解できたのではないでしょうか。では、上記の画像のように「12版▲」の▲は一体何だろうと疑問に思っている方もいるはずです。

この記号は、簡単に説明すると、新聞紙面データを印刷工場へと送った後に、編集側による何らかのトラブルによってデータを再送したり、ある特定の地域への配送を示す記号であると認識するとよいでしょう。「何らかのトラブル」というのは、記事の誤字脱字や見出しの事実関係の間違い、レイアウト崩れなどさまざまです。

時代はAIとはいえ、新聞の書き手は今のところまだまだ人間が主役です。早く記事を書こうとすると誤字脱字もありますし、取材源から聞いた情報内容を誤って理解してしまうこともあります。その誤った情報を元に書かれた記事に編集者が見出しをつけて、校閲もミスを見抜けずにスルー、そして降版ということになると、誤った情報が世の中に出てしまいます。

降版後に記者が自分の記事の間違いに気づいて声を上げたとします。これが新聞の刷り出し前なら、編集側で修正された記事を再配置して、再降版してデータを送り直せばよいでしょう。仮に初版が12版だとした場合、印刷工場へと最初に送ったデータは12版となると、再送した修正データも12版では、工場の人はどちらの12版を使えばよいのか迷ってしまいますよね。そこで、再送データには▲や●などを後ろにつけることで、再送データがどれなのかを一目で理解することができるというわけです。

ただ、●や▲がついている=ミス発生というわけでもないようです。

過去にご指摘をいただきましたが、同じ版でも、ある特定の地域にだけ発送されるものにつく記号もあるようです。

ご指摘によると、冒頭の写真に出てくる朝日新聞の12版▲は長野県にある私の実家で撮影したものですが、夕刊のない地域として付いている▲らしいです。

記号の扱いは各社で違いがあるようなので一概に語ることはできないようですね。

締め切り時間までの新聞社の動き

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さて、新聞を時間まで届けるためには、記者は締め切り時間までに原稿を書いて送らなければいけないという話になりますが、製作締め切り時間の1秒前までに原稿を送ればよいという話ではありません。

締め切りまでに紙面を完成させるには、記者が送った原稿をデスクが受け取って手直しをして、それを編集(整理部)に渡して、紙面に組み付けて見出しをつけます。そこから刷りを出して校閲のチェックが入り、全体で記事や見出し、レイアウトにおかしな点がないかをチェックする。そうなると、記者の原稿締め切り時間はもっともっと早くなることは、なんとなく想像がつくと思います。AIが発達すれば一瞬で完結するかもしれませんけど…。

締め切り時間が早いということは、締め切り後に飛び込んできたニュースは入らないということになります。つまり、締め切り時間が遅ければ遅いほど最新のニュースを入れることができるというわけですね。

初版と後版では紙面の質に差が出る?

同じ価格なら最新ニュースが入った新聞のほうがうれしいでしょうし、レイアウトや見出しなども練りに練った完成形に近い紙面のほうが見応えがあると考えるのは自然な発送です。

つまり何が言いたいのかというと、読者となっている新聞社の本社に近ければ近いほど、最新でクオリティーの高い新聞が読めるということになります。

新聞業界用語では、最初の締め切りの時間帯に作られた紙面は「初版」、初版以降の時間帯に作られた紙面は「後版」、最後の時間帯に作られた紙面は「最終版」と呼ばれています。

もし東京にお住まいなら、全国紙は東京で紙面を作っているので、いずれも最新のニュースが入った新聞を読むことができるでしょう。

一方、東京や大阪以外の地方にお住まいの方は、全国紙を読みたいというこだわりの強い方でなければ、 地元が本社の新聞をとることをおすすめします。先に述べた通り、輸送にかかる時間の分だけ、締め切りが早くニュースが遅れているのです。

版制にまつわるデスクと読者のやりとり

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記事を書いていた昔、かつて勤めていた全国紙に青森の読者から苦情の電話がかかってきて、運動部のデスクが対応していたのを思い出しました。

電話主(以下、主)「プロ野球の結果が毎日中途半端にしか入っていないのはなぜだ」

デスク(デ)「締め切り時間の段階ではまだ終わっていなかったんですよ」

主「地元の県紙は全部載ってるぞ」

デ「そう言われましても…」

主「これなら地元紙をとった方がいいってことじゃねえか」

デ「地元紙の記事は地元の話題以外はほぼ全て通信社の記事が使われています。各社で使い回されている記事と、自社の記者が署名付きで書いている記事。どちらを読みたいかということになりますよね」

翌朝の新聞に野球の結果が載らないことも

Unsplash / Pixabay

購読者とデスクのやりとりは、どちらの言い分も正しいといえます。これは、遠くの地方には締め切りが早い新聞が届くがゆえに起こりうることなのです。

ネットで一球ごとの成績がわかるほど速報性が発達している現在で、翌朝になっても場合によっては試合の結果が載っていない新聞なんて売り物になるんですかね。

地元の情報に加えて最新情報も見たいのなら地元紙、通信社の記事になるべく頼らない全国ニュースの署名原稿をたくさん読みたい方は全国紙ということになります。朝日新聞や読売新聞は2017年現在、通信社にほとんど頼らず自前で記事を書いています。

全国紙と地方紙の性格を併せ持つブロック紙

地方で新聞をとっている方は、全国紙よりも地元紙をとる傾向にあります。全国紙記者の署名記事よりも地元の情報を読みたいんでしょうね。中にはブロック紙(中日新聞など)のように全国紙と地元紙の性格を両方併せ持つ新聞も存在します。

版制の表記は各社さまざまなので(理由は不明)、お住まいの地域の新聞だけでなく、各地に出かけたら版を気にしながら紙面を眺めて、締め切りが早い地域なのか、遅い地域なのかを想像しながら読んでみると新聞も一味違う視点で見えてくるのかもしれません。

新聞の版制

2 件のコメント

  • 写真は朝日新聞の紙面だと思われますが、朝日新聞の場合、▲は統合版(夕刊がない地域の紙面)であることを示しています。また、「初版」「後版」という単語は聞いたことがありません。もしかしたそのように呼ぶ新聞社があるのかもしれませんが、一般的には「早版」「遅版」と言うかと思います。

    • この度はご指摘をありがとうございます。朝日新聞の場合▲は統合版を表しているのですね、投稿文を修正させていただきます。
      私は「早版」は聞いたことはありますが、「遅版」は聞いたことがありません。おそらく、各社呼び方が異なるのではないでしょうか。
      私は少なくとも2社を経験していますが、いずれも初版と後版と呼んでいました。その点についても加筆させていただきます。
      有用な情報をくださり感謝申し上げます。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    新聞社の記者をしています。仲間との起業を夢見て、これまでに学んできたノウハウを記しておきます。現在、主に結婚新聞や企業・団体向けの広報紙を制作していますが「こんな紙面をつくってほしい」とのご要望にも随時お応えしています。