ニュースや新聞を見ていると、共同通信とか時事通信という文字を見かけることがありますよね。ニュース記事を配信しているんだなというのは想像がつきますが、新聞社やテレビ局などのメディアがあるにもかかわらず、なぜ通信社という存在があるのかという疑問を持っている人は多いはず。

通信社が存在するを理由をざっくり説明すると、
地方の新聞社やテレビ局が気軽に行けない国内外の取材を代表して行く仕事
と、理解するとよいのではないでしょうか。

地方メディアに代わって遠隔地の取材をしてもらう

冒頭文でざっくり説明した通り、通信社の主な仕事は地方新聞社がなかなか行けない場所での取材をして、ニュースを配信することです。

通信社の仕事として代表的なのは海外取材でしょう。
地方紙の記事を読んでいると、文頭や文末に
【ソウル=共同】
といったクレジット(著作権者)の名前が付いています(体裁は各社微妙に異なります)。
これは、ソウルにいる共同通信の記者が書いた記事であること意味しています。
自社ではなく、ソウル支局にいるであろう記者の原稿を、そのまま載せているわけです。

スコア配信も通信社が請け負っている

通信社は記事や写真だけでなく、野球やサッカーのスコアも配信しているのです。
新聞社の人間が毎日プロ野球やJリーグの結果を手打ち入力していたら、必ずミスが発生するでしょう。
通信社はプロスポーツからマイナースポーツまで主要大会のスコアならほとんど配信してきます。
隠れた通信社の仕事ともいえるでしょう。

速報の配信も重要な役割

通信社といえば、速報の配信も非常に大切な役割として位置付けられています。

あまりピンと来ないかもしれませんが、テレビのテロップで音付きで突然出てくるアレをイメージするとわかりやすいでしょう。通信社は速報を重視しているため、ニュースが発生した際に原稿が出てくるスピートがとても早いのです。

たとえニュースの全容がわかっていなかったとしても、断片的な情報をかき集めてわずか数行の記事を配信してくることも多々あります。

ネット社会やSNSの発達によって、速報が持つ意味はより重要になってきました。情報が共有されるスピードがどんどん早くなっているため、情報の鮮度が少しでも落ちると価値がないとみなされるようになってきたからです。

新聞の締め切り間際に飛び込んできた速報は、なんとしてでも締め切りに間に合わせたいところ。通信社の原稿の到着を祈るように待って、慌てて入れるという光景が新聞編集ではよく見られます。

記事を1秒でも早く配信すること。それが通信社の使命であるともいえるでしょう。

地方新聞社の通信社への依存度は高い

「新聞は毎日これだけのスペースを記事で埋めるのは大変なんじゃないの?」と、よく聞かれることがあります。
こういった質問をしてくる人は、どうやら新聞に載っているニュースの全てを、自前の記者でまかなっていると思い込んでいるようです。

現実として、地方新聞社が紙面の全てを自前の記事を埋めることは至難の業です(一部の例外を除く)。
例えば、地方紙県では圧倒的シェアを誇る○○新聞は、○○県内の各市町村に支局を置いて、県内の取材体制は完全に網羅しているため、きめ細やかな報道ができるでしょう。
しかし、他県へと一歩外に出ると取材拠点もありませんし、他県では新聞を発行していないため、記者クラブに加盟できず事件や行政取材がしにくい環境となります。そんな時に共同通信の配信を利用して、他県で発生した出来事をまるで自分たちが取材したかのごとく載せているというわけです。

「地域紙」は通信社に加盟せず、自前で紙面を埋めている

地方紙よりも小規模で、自治体を限定して発行している「地域紙」という存在があります。
紙面もタブロイドサイズと小さく、紙面も多くて10ページ程度と少ないのですが、少ない記者で毎日紙面を埋めている新聞社もあるようです。通信社に加盟すると金銭的負担も大きいため加盟しないというのもあるかもしれませんが、細かな地域のことだけを愚直に発信し続けることで、地域から絶大な信頼を勝ち得ている新聞もあります。
規模が小さいからといってバカにはできないものがあります。

通信社の記事を自分のところの新聞に「まるで自分たちが取材したかのごとく」載せることができるのは、国内取材に限ればクレジットを掲載する必要がないからです。署名が無ければ、まるで自分たちが書いたかのように見えるでしょう。国内記事に通信社のクレジット掲載が義務付けられるようになると、地方紙は通信社のクレジットだらけになります。これは、地方新聞社の通信社への依存度はかなり高いことの裏返しになるということですね。

ちなみに、全国各地にある共同通信の地方支局は多くの場合、加盟している県紙の本社の一画を間借りする形で存在します。お互い持ちつ持たれつということでしょうか。

通信社は「顔の見えない」を配信する

以前、「新聞の●版ってなんだ?」という記事を書いたことがあります。版とは新聞製作の締め切りの区切りを指していて、新聞が作られた時間帯のことを指すと大まかに説明させていただきました。

版制の中では、かつて勤めていた全国紙のデスクと、苦情を申し入れる読者の電話でのやり取りを書きました。
プロ野球の結果が全て入っていない新聞など読む価値があるのかという読者に怒りに対して、
デスクは「あなたは通信社が全国の新聞社向けに配信する運動記事が読みたいのか、それともうちの記者が書いた署名付きの記事が読みたいのかを考えてください」と言って電話を切りました。

通信社の原稿は、全国の加盟新聞社に記事を配信するという性格上、ニュース原稿に署名をつけて載ることはほぼありません。あるとしても解説や特集記事などに限られると思います。

県紙は最終締め切りが遅いから新しいニュースが載っていて地元の話題も多いけれど、社会面は金太郎飴みたいな共同通信の全国ニュースばかりだから読み応えがない。
全国紙は地方向けだと締め切りが早いのでニュースの鮮度は落ちてしまうけれど、ほとんど自社の記者が書いている署名付きの原稿だから顔は見えやすい。
どちらを選ぶかは非常に悩ましいところです。

通信社の記者になりたいけれど…

新聞社就職を目指す人は、だいたい通信社の就職試験も受けるのですが、志望動機にけっこう困るんですよね。
だって、通信社は自分にとって身近な存在かといえば、そうではないのですから。
身近ではない理由として挙げられるのは「顔が見えない記事」を配信していることでしょう。
「顔が見えない」とは、署名が無いことを意味します。自分が書いた記事だと知られることもなく、全国の地方紙に我が物顔で掲載されてしまう。なんでそんな通信社の記者になりたいの?と言われると答えに窮してしまいそうです。

通信社が欲しがっている人材としてわかりやすいのは、外国語がずば抜けていること、スポーツの専門知識に長けていることの2つでしょう。前者は海外駐在が多いためで、後者はスポーツ専門記者を募集している特徴があるからです。

もし、通信社就職の志望動機に困っているのであれば、ヒントをあげられるとすれば「速報の重要性」からアプローチしていくのがよいかもしれません。もちろん、自身の体験を踏まえた上での志望動機にならないと、それこそ金太郎飴のような志望動機になってしまいますよ。

日本の通信社事情

日本におけるニュースの通信社は2つあります。一つは共同通信、もう一つは時事通信です。

2つの通信社の違いは何かと言われると、業界に携わる私でさえよくわかりません。速報を武器に全てのジャンルを取材しているという点では違いありません。ただ、一つ言えるのは経営の健全度では共同通信が時事通信を圧倒しているということだけは確かです。

また、通信社の加盟数も大きく違うとは思います。県紙のほぼ全てが共同通信に加盟しているのに対して、時事もそれなりに加盟社はあるのですが、規模は小さいでしょう。朝日新聞や読売新聞は2000年代後半あたりから共同通信の加盟社から外れた経緯を持っており、時事通信には加盟しています。

日々の仕事の中での実感としては、「時事通信の原稿は危なっかしい」という業界認識を持たれつつあります。

その原因となったのは、2018年に死去した金子兜太さんの訃報記事を亡くなる前に配信してしまったことにあります。結果として金子さんは間も無くお亡くなりになられたのですが、訃報記事のフライング配信はもちろんご法度であり、十分な裏付けがされないまま書いてしまったのでしょう。

また、どんな記事だったのか失念してしまいましたが、誤報記事を配信したとして共同通信と、配信した共同の記事を掲載した地方紙が訴えられるという事態も発生したことがあります。配信した側だけでなく、掲載した側にも責任が問われるということになり、メディアも配信記事に疑義の目を持ちながら使用するかどうか検討しているというのが、現場の現状でしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

新聞社の記者をしています。仲間との起業を夢見て、これまでに学んできたノウハウを記しておきます。現在、主に結婚新聞や企業・団体向けの広報紙を制作していますが「こんな紙面をつくってほしい」とのご要望にも随時お応えしています。