ニュースや新聞を見ていると「共同通信」「時事通信」という文字をしばしば見かけます。これらの通信社はニュース記事を配信するのが仕事ですが、新聞社やテレビ局などのメディアがあるにもかかわらず、なぜ通信社という存在があるのかという疑問を持っている人は多いはず。今回は、通信社の存在意義について、新聞社の視点からざっくりと説明してみます。

10秒でわかる通信社の役割
  • 速報性…どのメディアよりも早くニュースを配信する
  • 網羅性…取材に行けない海外などの遠隔地のニュースを配信する
  • 新聞社の多くは共同通信の原稿を使い、補完的に時事も使用している

通信社の網羅性:海外取材やスコア配信など広範囲をカバー

冒頭の解説でざっくり説明しましたが、通信社の主な仕事の一つとして、地方新聞社が取材しにくい場所で取材をしてニュースを配信することが挙げられます。

通信社の仕事として代表的なのは海外取材でしょう。
地方紙の記事を読んでいると、文頭や文末に
【ソウル=共同】【パリ=時事】
といったクレジット(著作権者)の名前が付いています(体裁は各社微妙に異なります)。
これは、前者がソウル駐在の共同通信記者による原稿、後者はパリ駐在の時事通信記者の原稿であることを指します。掲載している自社メディアが書いた生地ではなく、通信社の海外支局の原稿を載せているというわけです。

ゴマさん
今まで新聞を読んだ中では【東京=共同】みたいなクレジット付きの記事は見たことがないんだけど?
管理人
国内の記事は通信社のクレジットは付かないルールがあるんです。全ての原稿にクレジットがついたら、地方紙は通信社のクレジットだらけですよ笑
スポーツのスコア配信も通信社が請け負う

実は、通信社は記事や写真だけでなく、野球やサッカーのスコアも配信しています。
新聞各社の人間が毎日開催されているプロ野球やJリーグの結果を手打ち入力していたら、たくさんありすぎて必ずミスが発生するでしょう。通信社はプロスポーツからマイナースポーツまで主要大会のスコアならほとんど配信してきます。通信社の隠れた大切な仕事ともいえるでしょう。

通信社の速報性:いち早く原稿を送る使命

通信社といえば速報配信も非常に大切な役割として位置付けられています。あまりピンと来ないかもしれませんが、大事件が発生した際に、テレビのテロップで音付きで突然出てくる字幕をイメージするとわかりやすいでしょう。通信社は速報性を非常に重視しているため、ニュースが発生した際に原稿が出てくるスピートがとても早いのです。

管理人
共同通信の加盟社には配信記事を音声で知らせる「ピーコ」というスピーカーがあり、配信について逐一お知らせしてくれます。大事件の時は特別なチャイムで知らせてくれるんですよ。

たとえニュースの全容がわかっていなかったとしても、断片的な情報をかき集めてわずか数行の記事を配信してくることも多々あります。完全な原稿に仕上がるまで、少しずつアップデートしているようなイメージです。

ネットやSNSの発達によって、速報が持つ意味はより重要になりました。情報が共有されるスピードがどんどん早くなっているため、情報の鮮度が少しでも落ちると価値がないとみなされるようになっています。

新聞の締め切り間際に飛び込んできた速報は、なんとしてでも締め切りに間に合わせたいところ。通信社の原稿の到着を祈るように待って、慌てて入れるという光景が新聞編集ではよく見られます。

記事を1秒でも早く配信すること。それが通信社の使命であるともいえるでしょう。

通信社と地方新聞社は切っても切れない関係

ゴマさん
新聞の紙面は毎日たくさんのスペースを記事で埋めるのは大変なんじゃないの?[/voice icon]

上記のよう質問をしてくる人は必ずいるのですが、どうやら新聞に載っているニュースの全てを、自前の記者でまかなっていると思い込んでいるようです。しかし、多くは通信社の原稿を使っているのが実情です。

実際、地方の新聞社が紙面の全てを自前で埋めることは至難の業です(一部の例外を除く)。
例えば、とある県では圧倒的なシェアを誇る○○新聞は、○○県内の各市町村に支局を置いてあり、県内の取材体制は完全に網羅しているため、きめ細やかな地域報道ができるでしょう。

しかし、他県に一歩外に出ると取材拠点もありませんし、他県では新聞を発行していないため、記者クラブに加盟できず事件や行政取材がしにくい環境となります。そんな時には通信社の配信原稿を利用して、他県で発生した出来事をまるで自分たちが取材したかのごとく載せているというわけです。

「地域紙」は通信社に加盟せず、自前で紙面を埋めている

地方紙よりも小規模で、自治体を限定して発行している「地域紙(タウン紙)」という存在があります。
紙面もタブロイドサイズと小さく、紙面も多くて10ページ程度と少ないのですが、少ない記者で毎日紙面を埋めている新聞社もあるようです。通信社に加盟すると金銭的負担も大きいため加盟しないというのもあるかもしれませんが、細かな地域のことだけを愚直に発信し続けることで、地域から絶大な信頼を勝ち得ている新聞もあります。
規模が小さいからといってバカにはできないものがあります。

通信社の記事を自分のところの新聞に「まるで自分たちが取材したかのごとく」載せることができるのは、先に触れた通り、国内取材に限ればクレジットを掲載する必要がないからです。ちなみに、全国各地にある共同通信の地方支局は多くの場合、加盟している県紙の本社の一画を間借りする形で存在します。お互い持ちつ持たれつということでしょうか。

通信社は「顔の見えない」を配信する

以前、「新聞の●版ってなんだ?」という記事を書いたことがあります。版とは新聞製作の締め切りの区切りを指していて、新聞が作られた時間帯のことを指すと大まかに説明させていただきました。

新聞の版制

新聞の欄外に書いてある「●版」とは?

2017年2月11日

通信社の原稿は、全国の加盟新聞社に記事を配信するという性格上、ニュース原稿に署名をつけて載ることはほぼありません。あるとしても解説や特集記事などに限られると思います。

県紙は最終締め切りが遅いから新しいニュースが載っていて地元の話題も多いけれど、社会面は金太郎飴みたいな共同通信の全国ニュースばかりだから読み応えがない。
全国紙は地方向けだと締め切りが早いのでニュースの鮮度は落ちてしまうけれど、ほとんど自社の記者が書いている署名付きの原稿だから顔は見えやすい。
どちらを選ぶかは非常に悩ましいところです。

通信社記者と新聞社記者の違いは?

新聞社への就職を目指す人は、多くの場合、通信社の就職試験も受けるのですが、志望動機にけっこう困るんですよね。なぜかというと、通信社は自分にとって身近な存在かといえば、そうではないのですから。

通信社が身近に感じない理由は「顔が見えない記事」を配信している点にあるでしょう。
「顔が見えない」とは、署名が無いことを意味します。自分が書いた記事だと知られることもなく、全国の地方紙に我が物顔で掲載されてしまう。なんでそんな通信社の記者になりたいの?と言われると答えに窮してしまいそうです。

一方で、通信社が欲しがっている人材としてわかりやすいのは、外国語がずば抜けていること、スポーツの専門知識に長けていることの2つでしょう。前者は海外駐在が多いためで、後者はスポーツ専門記者を募集している特徴があるからです。

もし、通信社就職の志望動機に困っているのであれば、ヒントをあげられるとすれば「速報の重要性」からアプローチしていくのがよいかもしれません。もちろん、自身の体験を踏まえた上での志望動機にならないと、それこそ金太郎飴のような志望動機になってしまいますよ。

日本の通信社事情:共同通信と時事通信

日本におけるニュース専門の通信社は2つあります。一つは共同通信、もう一つは時事通信です。

2つの通信社の違いは何かと言われると、業界に携わる私でさえよくわかりません。速報を生命線に全てのジャンルを取材しているという点では違いありません。ただ、一つ言えるのは経営健全度では共同通信が時事通信を圧倒しているということだけは確かです。

管理人
時事通信の待遇の悪さを表すスローガンに「産経残酷、時事地獄」という言葉があるくらいですから…

また、通信社の加盟数も共同と時事では大きく違うとは思います。地方の県紙のほぼ全てが共同通信に加盟しているのに対して、時事もそれなりに加盟社はあるのですが、規模は小さいでしょう。

有力全国紙と通信社の関係は?

朝日新聞や読売新聞は2000年代後半あたりから共同通信の加盟社から外れた経緯を持っており、時事通信には加盟しています。加盟料は部数に比例するため、通信社原稿に頼らず自前主義に転換したという経緯があるわけです。

危なっかしい?時事通信の原稿

新聞業界では、「時事通信の原稿は危なっかしい」という業界認識を持たれつつあります。最近のケースを取り上げてみました。

ケース1:亡くなる前に訃報記事を配信

2018年に死去した金子兜太さんの訃報記事を亡くなる前に配信してしまったことがありました。結果として金子さんは間も無くお亡くなりになられたのですが、訃報記事のフライング配信はもちろんご法度であり、十分な裏付けがされないまま書いてしまったのでしょう。

ケース2:著名人の顔画像を取り違え配信

2019年に元ジャニーズタレントと女優が大麻所持容疑で逮捕されました。一報を配信するべく時事通信は逮捕女優の昔の顔画像を配信して、テレビ局が使用したのですが、後に顔写真が他人だったことが判明しました。

通信社の誤報を掲載したメディアも責任を問われる

また、どんな記事だったのか失念してしまいましたが、誤報記事を配信したとして共同通信と、配信した共同の記事を掲載した地方紙が訴えられるという事態も発生したことがあります。配信した側だけでなく、掲載した側にも責任が問われるということになり、メディアも配信記事に疑義の目を持ちながら使用するかどうか検討しているというのが、現場の現状でしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

新聞社の記者をしています。仲間との起業を夢見て、これまでに学んできたノウハウを記しておきます。現在、主に結婚新聞や企業・団体向けの広報紙を制作していますが「こんな紙面をつくってほしい」とのご要望にも随時お応えしています。