(追記:2017年5月17日リライト)
前回は、生のニュースを題材に実際に見出しをつけてみました。みなさんはうまくつけることができたでしょうか。字数をきっちりそろえながら見出しをつけるのは、訓練した編集記者でもニュースが複雑だと難しく感じる時もしばしばあります。
ところで、今まで紹介してきた定型の見出しは、そもそもなぜあのような形をして、決められた文字数でつけなければならないのでしょうか。
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新聞見出しは「9文字、11文字」が基本
新聞見出しは、無理をしてでもこのような形を維持しなくても良いのではないかと思っている方も中にはいるのでしょう。
実は、新聞が見出しの文字数にこだわるのは、長い歴史をかけて編集を積み重ねて「このぐらいの文字数が最もわかりやすく、簡潔に見える」という苦労の賜物なのです。
その「こだわりの文字数」が、上記の画像に表れています。
並列見出しであれば文字数をそろえること、「チドリ」の見出しであれば基本は右側9文字、左側11文字。各社とも細かいばらつきはありますし、字数を超えることも頻繁にありますがだいたいこのくらいが最も美しく見えます。
実際に検証してみた
実際に、朝日新聞(2016年2月8日付14版)に掲載されている見出しをもとに検証してみましょう。
1面トップ
(横凸版)北朝鮮 ミサイル発射=9文字
(サブ)国際社会の非難無視=9文字
(サブ2)沖縄通過、宇宙軌道に=10文字(句点含む)
(関連原稿)首相、制裁準備を指示=10文字運動面トップ(囲みの形)
(メーン)敵なし 高梨10連勝=8文字
(サブ)目標は男子並みの飛躍=10文字社会面トップ
(横凸版)発射 怒りと困惑=7文字
(関連原稿)「解決 遠ざかるばかり」=10文字(カッコ1組で1文字)
いかがでしたでしょうか。どの見出しもメーン、サブの見出しともに9〜11文字に近い文字数で見出しがついていますね。
これが12文字、13文字くらいまで伸びることも仕方ないとされる場合もあります。それ以上ともなると、さすがに再考せざるを得ないでしょう。
長い固有名詞でカタカナだったりすると、やっかいですよね。
長い固有名詞「省略してもいい?」
しかし、その長い固有名詞が何回も登場すると、編集記者はこう考えるわけです。
「もう省略してしまってもいいんじゃない?」
インフルエンザ=インフルと省略する勇気
例えば、インフルエンザの略称は「インフル」となっています。私が覚えている限り、この「インフル」という略称が出た時は鳥インフルエンザが流行した時なのではないかと。ある日、いきなり「鳥インフル」とある新聞が付けた時、その見出しを見た私は「出し抜かれた!」と心の中で悔しい思いをしました。
インフルエンザをインフルと省略するのは、簡単に見えて容易なことではありません。何百万という読者が新聞を読むと、いきなり「インフル」と読まされるのですから、見出しとして通用するかしないかが編集局内で議論されるわけです。
インフルと初めて見出しを付けた記者も大したものですが、それを許す新聞社もなかなかすごいと思います。今ではインフルで十分通用しますからね。新聞社発の略語や流行語はたくさんあります。
ハーフが多いスポーツ選手は見出しに困る?
メジャーリーグで戦うダルビッシュ有選手はダルビッシュでは6文字と長いので「ダル」と省略しますよね。彼が仙台育英の選手として甲子園で活躍していたころはまだダルビッシュはそのまま呼ばれていましたが、プロで活躍するにつれてこの略称が定着するようになりました。
陸上選手のケンブリッジ飛鳥選手も長すぎる名前ですが「飛鳥」ではハーフ感がでないし、ケンブリッジだけでは日本選手らしさが出ない。こんな議論を重ねるうちに、ケンブリッジというだけで「飛鳥」が付いてくるようになりました。最初は「この見出しで通用するかな」と思っていても、時間が経過するうちに定着するものです。
その1文字を削り出せ
箱根駅伝の強豪校には「その1秒を削り出せ」というスローガンがありますが、記者はまさに「その1文字を削り出せ」と、短い文で読者に伝わるように頭脳をフル回転させているのです。
新聞における見出しの世界がお分かりいただけたでしょうか。「あなたの新聞」が作る結婚新聞においても、短くても的確なキャッチフレーズのような見出しを提供していきます。興味を持った方は作品例をご覧ください。
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