(追記:2017年8月27日リライト)
「あなたの新聞」がお届けする新聞制作技術の第1回講座は、新聞の見出しの形と大きさについてです。
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新聞見出しの役割
新聞記事に必ずつくのが見出し。タイトルのようなものだと思っている方は多いでしょうが、新聞見出しは読むだけで記事の概要が理解できるように作られています。
それもそのはず、新聞は朝刊1部の中に何百記事、何万文字という情報が詰まっています。この忙しい時代に、新聞の記事を隅から隅まで読んでいるという方は、かなり時間を持て余している方でしょう(笑)。
「タイトル+内容」を兼ね備えていること
そこで、中身を詳しく読まなくてもざっと見てエッセンスが理解できるように、「タイトル+内容」の要素を兼ねたのが見出しだと思っていただいて構いません。
新聞見出しとは?
内容のポイントを押さえた記事のタイトル。ニュースを流し読みしても内容が頭に入ってくるための工夫がなされています。
新聞は12段紙面
見出しの定義を踏まえた上で、見出しの形に移りましょう。
新聞の各紙を比較すると、細かい体裁の差はあれど、基本的な見出しの形はどこも同じです。
2000年代中頃までは15段
2016年現在、全国紙の多くは「1ページ12段」です。2000年代中頃までは「1ページ15段」でしたが、文字を大きくして見やすくしようという流れから12段への移行を検討する社が相次ぎました。
1段の幅が広がるということは、記事が1段に入る文字数も大きくなるということですね。例えば、朝日新聞や読売新聞は1段1行につき12文字入ります。15段の頃は11文字でした。文字が大きくなり、かつ段数が少なくなったことで、1段に入る文字数は多くなったということです。他にも、産経新聞や東京新聞も紙面を12段化しています。
一方、12段化を採用していない新聞社もあります。全国紙では毎日新聞と日経新聞がそれにあたります。毎日は今まで通り15段を堅持しつつも、文字は大きくなっています。つまり、1行11字から10文字に減らすという他のメジャー紙の流れとは逆行する形をとりました。一方、日経新聞は文字の1段の字詰めも文字の大きさも変化していません。
日経新聞
これはあくまで推測ですが、日経は情報量が他紙と比べて非常に多いため、文字を大きくすると1ページに収まる記事量も減ってしまう。かといってページ数を増やすと紙代や輸送コストも増えてしまうため、そのままに据え置くという判断をしたのではないかと考えられます。
毎日新聞
毎日は独自路線を貫いていますが、12段化の移行時に「紙面改革を横並びでやろう」と持ちかけた読売新聞や朝日新聞は、主要紙では毎日新聞にだけ声をかけなかったというウワサが流れました。つまり、読売や朝日は紙面改革を名目に経営基盤の弱い毎日を潰そうと画策していたというのです。2017年5月現在も毎日新聞は健在ですが、この流れに反発するかのごとく毎日は15段を堅持しています。ただ、個人的には1段10文字は読みにくいと思います。
東京新聞
在京メジャー紙の一つ、東京新聞(中日新聞)は2013年から紙面を12段化しました。朝日、読売、産経と比べるとかなり遅い移行でしたが、かつて東京もまた毎日と同じ路線を歩んでいました。どういう過程で東京新聞がいきなり12段化に踏み切ったのかはわかりませんが、ニュース面だけ12段化をして地方版はなぜか15段紙面のまま。情報量の都合から、地方版の文字を大きくすることは避けたいという思いがあるのでしょうか。
1段に入る見出しの文字数も増えた
新聞の1段の面積が広がったことで、見出しの入る文字数も自然と広がりました。
例えば、1段の見出しは15段の紙面のころは、7文字を基準としていましたが、現在は8文字まで入るようになりました。後付けですが、12段化によって見出しをつける整理記者としても、本数が増えたことでより見出しがつけやすくなりました(もう昔には戻れませんね)。
新聞業界では見出しの文字数を「本」と数えます。1段7文字というのは厳密に言えば間違いで、業界的には1段7本というのが正しい数え方です。
12段紙面の歴史はまだまだ浅い
とはいえ、上記のお話は、当サイトのメーン事業である結婚新聞を作る上ではあまり関係のない話です。
今回は、15段紙面当時のルールにのっとった新聞の見出しを解説します。なぜ12段ではなく15段なのかと申しますと、前者よりも後者の方がずっと歴史が長いため、業界としてのノウハウが確立されているからです。12段化は落ち着いてきたとはいえ、まだまだ手探りの部分も多いです。
新聞見出しは並列型とチドリ型がある
では、15段化時代の見出しの形を見てみましょう。Illustratorで文字を打ち込んでサイズを指定して簡易的な表を作ってみました。
お気づきの方もいるでしょうが、見出しには文字が同じ数だけ並列するタイプと左右で大きさが異なるタイプ(チドリ型)があります。前者は1段や2段、後者は2段以上の見出しで使われるのが一般的です。並列型、チドリ型ともに、ニュースに見出しをつけやすい形がありますので、状況によって使い分けます。
15段紙面では1段見出しに7文字、12段紙面は1段8文字
1段に入る基本的な文字数は7文字でした。各社によって入る文字数には多少の差がありますが、多くても8本でしょう。12段化となった現在は8本が主流となりました。
よりニュースを強調させたい時には文字数を少なくする代わりに文字を大きくします。上記の例では7文字が5文字にしぼったことで、見出しが大きくみえますね。
ゴシック体と明朝体の見出しをどう使い分けるか
新聞記事に使われるフォントのほとんどは明朝体ですが、このフォントばかり使っていると単調な印象となりがちです。これを回避するには、適度にゴシック体のフォントを入れると紙面に緊張感が生まれます。ゴシック体を使うタイミングは、やはりニュースを強調させたい時に使うのが効果的です。
また、記事のリード文(前文)を目立たせたいけれども、スペースの都合でフォントを大きくすることができない場合は、ゴシックにするとよいでしょう。明朝体は線が細いため、写真の上に乗せると見えにくくなるというデメリットもありますから、そんな時にも代役としてゴシックを使うと効果的です。
左右の文字数を均等に合わせると見出しがそろってきれいにみえます。プロの紙面に近づくには、見出しの文字数を合わせる努力から始めましょう。また、1段見出しばかりではなく、2段、3段など多彩な見出しを使うことで単調な紙面から脱することもできます
右側の見出しと左側の見出しの関係
2段目以降は1段の見出しとは形が異なってきます。右側にニュースの核となる見出しをつけて、左側は右側の内容を補完するような内容にします。大切なのは、左右のうち一方の見出しだけ見ても内容が伝わるということです。つまり、左右の見出しの内容が独立しているということです。
新聞見出し文字の大きさにある法則
見出しを作ると、ある法則に気づいてくるでしょう。それは、文字の大きさです。
2段見出しの左側の小さい文字は、1段見出しで使った文字と同じ大きさで、3段見出しの左側の小さな文字は、2段見出しの右側で使った文字と同じ大きさです。4段見出しもしかりです。
このように、2段以降の見出しは、右側の見出しを補完する左側の見出しが1段小さい見出しの大きさと同じなのです。このように使う文字の大きさに基準をつけて見出しを作ると、大きさが統一されたきれいな見出しを作ることができるでしょう。
また、同じ段数でも文字を大きくしたい時は、文字数を少なくして余ったスペースを使って広げましょう。
見出しをきれいに見せる「チドリ」
2段目以降の見出しは右側が斜め上に位置し、左側は斜め下に位置しています。この位置関係が保たれると見出しとしてきれいにみえます。業界ではこの位置関係を「チドリ」と呼んでいます。整理記者は、見出しがチドリに見えるように文字数をそろえて見出しをつけているのです。
まとめ
- 現在の新聞は12段が主流で15段は少数派
- 見出しには並列型とチドリ型が存在して、見出しの大きさやニュースの伝えやすさによって使い分ける
- 新聞見出しは並列型とチドリ型がある
- 新聞の印象が単調にならないように明朝体とゴシック体を使い分ける
- 見出しに使う文字の大きさに基準を設けて統一させるときれいな紙面になる
なんとなく、新聞見出しの形について理解できましたでしょうか。お祝い新聞だけではなく、学生新聞などやPTA新聞といった本格的な内容が求められる場合にもとても役立ちます。
次回は、実際にあるニュースに独自の見出しをつけてみたいと思います。
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