新聞各紙は、ニュースのどの部分を大事にしながら見出しをつけているのか比較しながら読むと、意外な差に気づくことがあります。
新聞の面白さは、全く同じニュースにおいても編集する人間によって見出しや紙面の作りが全然違う点です。今回は囲み記事となっていた「ポテトチップスの品切れ」を各紙(毎日、朝日、中日)が見出しでどう伝えたのか比較してみました(いずれも2017年4月11日付け)。
特に、囲み記事につける見出しは編集者のセンスが端的に現れます。各紙の編集者はどのような点に気をつけながら見出しをつけているのか参考にしましょう。
Contents
語感のリズムを重視
毎日新聞がつけた見出しは、声に出して読んでみると、ポテチとピンチの発音が似ており、短い単語でポテトチップスの危機感を伝えられていると感じました。編集を担当した整理記者も狙ってつけたと思われる一本でしょう。
一方、課題と思われるのは見出しの本数の多さです。メーン見出しの他にも大小含めて計4本も見出しがあります。中規模の囲み記事(ハコ)ですが、見出しの数は多くても3本程度に収めるのがよいと思われます。あえて外すとしたら「再開めど立たず」は必要ないでしょう。
ポテトチップスの資料写真がカルビーしかないのも残念です。
面白さより事実表現を優先
朝日新聞は「次々販売休止」という部分をメーンにとっています。囲み記事ではなく一報記事としてつける見出しに近い印象を受けますが、「定番に注力」という部分で「販売は休止するけど、全て休止するわけじゃないよ」というニュースを補っている点は優れています。写真もカルビーと湖池屋の大手2社をしっかり押さえていますね。
一方、見出しの出来としては無難であり、囲み記事にしては面白みを欠いている印象も受けます。面白さより正確性を重視しているのでしょうが、1ページの中では1つくらい見出しで遊んでみたほうが紙面としての魅力は上がるかもしれません。
ダジャレに走る
中日新聞の紙面では見出しがダジャレ風でした。「無い物は揚げることができない」というフレーズの中に、「イモ」の言葉をきわ立たせる形で入れて、編集担当者としては少しでも面白いネタにしようと頑張ったのでしょうか。
見出しの構成は毎日新聞に近い印象を受けますが、見出しの数は3本に抑えられており、多すぎるという印象は受けません。ただ、資料写真が他紙と比べると小さい気もします。そんなに大きくするほどの写真でもないから小さくてもいいやと思ったのでしょうか。
言葉遊びか、ニュースを優先か
新聞3紙を比較すると、見出しのニュース要素を最初に挙げるか、言葉遊びで目を引くかで編集者の意図がはっきりと分かれていることがわかります。
先に述べておきますが、朝日新聞は見出しで言葉遊びをしないとか、毎日新聞が常にダジャレばかり意識している見出しをつけているわけではありません。会社は関係なく、あくまで編集者個人が練りに練って紙面に反映させた結果と認識してください(ただ、各社が大事にしている編集方針は見えてくることもあるでしょう)。
どちらが良い、悪いの話ではありませんが、遊びの要素を外した朝日の見出しはスッキリした印象こそありますが、囲み記事としては物足りない気もします。個人的には毎日の見出しが最も好きですが、見出しが多すぎるのが減点ポイントです。中日も頑張ってひねり出した見出しですが、ちょっと野暮ったい印象も受けます。
見出しはなるべく短く
新聞の見出しをつける上で大切にしたいのは、できるだけ短くするという意識です。
各紙ともポテトチップスを「ポテチ」と言い換えているのは、単語が長すぎるからであり、ポテチでも一般的に通じると判断したからでしょう。
毎日:ポテチ、ピンチ
朝日:ポテチ次々販売休止
中日:なイモのは揚げられず…
メーン見出しだけを見ただけで、どのようなニュースなのか理解できるかという視点に立つことも大切です。一目でニュースが理解できるのは朝日、ニュースのインパクトを重視するなら毎日、ユーモア重視であれば中日と三者三様です。
注目したいのは2番手、3番手の見出しです。
毎日:北海道台風でジャガイモ不足、販売休止相次ぐ
朝日:大手2社定番に注力、道産ジャガイモ台風で不作
中日:ポテチ相次ぎ販売終了、台風被害で北海道不作
台風でジャガイモが不作だったことを各紙とも押さえていますが、気になるのは見出しの数。毎日は13文字、朝日は12文字、中日は10文字です。毎日は「北海道」と入れていますが、朝日は「道産」と短く言い換えています。中日はそもそも「ポテチはジャガイモから作られているのだから、わざわざ見出しに入れなくてもわかるだろう」というスタンスで、ジャガイモを除外しています。
見出しの「遊び」が少ないぶん、朝日は「定番商品に注力する」という点が押さえられているのは秀逸です。これの要素が無ければ、見出しだけ読むとポテチが全て販売休止に追い込まれているかのように見えるからです。見出しが多くなるのを避けるため、あえて遊びの要素を外したという意図も推測できます。
見出しに正解はない
各社とも限られた時間の中で、これだと思うフレーズを考え抜いた結果が紙面に反映されています。好みはそれぞれ異なるため、ベストな見出しは選べませんが、編集者は漫然と見出しをつけているのではなく、工夫を凝らしているという努力はわかってもらえたのではないでしょうか。
見出しに正解はありません。これから新聞を作ろうとしているあなたは、あなただけの見出しをつけてください。
コメントを残す