かっこいい新聞を作りたいのなら、日々の紙面に学べ。今回は新聞見出しのバリエーションとして、運動面で毎日のように取り上げられているプロ野球を題材に、定番から工夫された作品まで計4紙の見出しを紹介します。
2017年のプロ野球もはや1カ月が経過。セパともに開幕ダッシュに成功した球団がいれば、大幅に遅れた球団もいました。特に目についたのは、2016年の覇者である北海道日本ハムファイターズが10連敗した記事です。前年に日本一となった球団の2ケタ連敗は話題となりました(ファイターズファンのみなさんごめんなさい)が、新聞各紙はどのように伝えたのでしょうか。
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普通につけた見出し
読売新聞と毎日新聞は運動面のトップ扱いで連敗を伝えています。
読売:ハム泥沼10連敗
毎日:ハム悪夢10連敗
読売と毎日は「泥沼」か「悪夢」かの違いだけで、見出しの形としては最もオーソドックスです。
その日の面でのトップニュースの中でも、横1段を使って伝えるのは最上級に近い扱いを意味しています。見出しの活字が大きくなると、横幅も大きくなるので見出しの文字数も自然と制限されます。かといって「ハム10連敗」だけでは短すぎますし、味気ないですよね。そこで「泥沼」や「悪夢」という惨状を表現するワードが加わってくるというわけです。
あぁハム10連敗
漢字ばかりだと硬い印象を受けるので、ひらがなを交えると情緒的になるでしょう。スポーツ紙によくあるパターンですね。
上記の2紙で掲載された見出しは7文字でした。もうちょっと字数が入りそうだと思ったら、試合の内容を2文字で表現しましょう。9文字入れば音読するとリズム感のある見出しとなります。
投壊ハム 悪夢10連敗
拙攻ハム 泥沼10連敗
デザインにこだわった見出し
一方、朝日新聞はどのように見出しをつけたかというと、黒星を見出しに重ねて表現していました。こんな風に文字にデザイン的要素を加えることも可能です。
朝日:貧打のハム 泥沼10連敗
黒星の数はすでに決まっているので、文字数を調整する必要があります。本来なら見出しに余計な助詞は必要ありませんが、今回は字数合わせで入れたのでしょう。
朝日で作られていた見出しは白星や黒星が積み重なると表現したくなる手法で、勝敗を報じる機会の多い運動面ではしばしば登場します。この上をいく独創的なレベルとなる見出しを発見しました。それは中日新聞の紙面です。
よく見ると「10」の文字の中に連敗が10個入っています。ここまでやると他紙の整理記者も「おおっ、やるなあ」とうなるレベルです。今回比較した4紙の中では最も秀逸だと思います。
新聞の編集も毎日やっていると、仕事とはいえさすがに飽きます。同じレイアウト、同じ見出しの形になるマンネリ化は避けたい。これは読む側も同じで、毎日同じ形の紙面よりも、ちょっとした変化があった方が目を引きますよね。このような努力を新聞社の編集者(整理記者)は、日々頭を悩ませながら重ねているのです。逆をいえば、見出しやレイアウトのバリエーションの多さは、編集者のレベルに比例するといえるでしょう。
デザイン見出しの多用は禁物
見出しに使っている文字は同じでも、重ねた黒星に文字を重ねたり、強調させた数字の中に文字を入れたりすることで、一味違った見出しとなることができます。活字ばかりで見出しに面白みが感じられないときは、このような工夫をこらした見出しがあると、一気にプロっぽい紙面になります。
ただ、ひとつアドバイスをお送りすると、一部の例外をのぞいてデザイン見出しの多用は禁物ということだけ覚えておいてほしいものです。なぜなら、全ての見出しが朝日や中日でついているような作りをしていると、紙面のメリハリがなくなるおそれがあるからです。バリエーションが多いことを自慢するかのように、デザインにこった見出しを乱立させるのではなく、ひとつの紙面に1回くらい登場させるのが無難でしょう。過ぎたるは及ばざるが如し、ですね。
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