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日本とEU(欧州連合)の間で取引する貿易品の関税の撤廃を目指した協定が合意に達した。一時期参加の可否で激論が飛び交ったTPP(環太平洋経済連携協定)や、日中印を中心とする16カ国で交渉を進める東アジア地域包括的経済連携に並び、世界の貿易総額の約3分の1をカバーする「メガFTA」の柱だ。

2010年代前半から国内で話題になり続けたTPPに代わり、暮らしに大きな影響を与えるであろう日欧EPAは、就活の筆記試験や車メーカーなどの面接試験でも話題として出るかもしれない重要なキーワードだ。全て覚えるのは大変なので、ポイントをしっかり覚えたい。

合意はしたが発効はもう少し先

リード文では「協定が合意に達した」と書いた。勘違いする方がいるので先に述べておくが、合意には達したものの、協定はまだ「発効」されていない。欧州から輸入されるさまざまな品目の値段が安くなるのはもう少し先の話になる。

日欧EPA発効までの道のり

(表1)日欧EPA発効までの道のり(読売新聞より)

日欧EPAは2017年に大枠で合意に達した。しかし、まだ細かい部分では積み残している課題がある。個人情報の取り扱いや、企業が輸出先の政府から不当な扱いを受けた際に関する紛争処理手続きなどがそれにあたる。また、協定文の確認をした上で署名を終えても、今度はEUに加盟する28カ国の承認が必要となる。これにより、協定の発効はさらに時間がかかり、早くても19年中になると見られている(表1参照)。

米のTPP離脱によって主軸は日欧EPAへ

2013年に交渉を開始したものの、当時はTPP交渉や承認に向けた審議に時間裂かれ、15、16年は「年内合意」が先送りされた。しかし、米トランプ政権の誕生によって、アメリカはTPPを離脱。日本の通商戦略はTPPから日欧EPAへと主軸が移りつつある。

2016年における日欧の貿易構造表

(表2)2016年における日欧の貿易構造表(日経新聞より)

合意へのハードルは国内中で賛否が飛び交ったTPPよりも低いとされる。その理由は、コメのような国内における政治的機微に触れる品目が少なく、かつ多国間交渉に見られる調整の難しさも少ないからだ。

日欧の貿易構造表を見てもらいたい (表2、3参照)。日本からEUへの輸出において多数を占めるのは自動車関係や光学機器などが多くを占め、輸入品もまた自動車や光学機器が多いことがわかる。医薬品も数多く輸入されている。

日本車の関税撤廃に注力

日本と欧州、アメリカの貿易関係

(表3)日本と欧州、アメリカの貿易関係(読売新聞より)

日欧EPAで日本政府が最も力を入れていたのは日本車の輸入時にかかる関税(10%)の撤廃だ。欧州では韓国車がシェアを徐々に伸ばしているという危機感が背景にあるという。これは韓国とEUが2011年に自由貿易協定(FTA)を結んだことにより、段階的に関税が引き下げられて2016年に完全撤廃となったからだ。実際に、09年までは4%程度だった韓国車のシェアは、16年には6%強まで伸びている。

今回の協定によって、日本車の関税は発効から8年をかけて段階的に減らしていくことになる。10%値下がりすれば、欧州価格で300万円のだった車が270万円で売ることができる。やっと韓国車と同じ土台で欧州を戦えるというわけだ。

また、自動車部品についても品目ベースで関税の91.5%を即時撤廃することが決まった。TPPでは87.4%だったので、それを上回る実績となる。

他にも、輸出品の主力である一般機械や化学工業、電気機器の関税も、輸出額ベースで9割前後を即時撤廃。テレビにかかる関税(14%)ついては、6年目に撤廃される。

輸入される欧州車は安くならないの?

「欧州からの輸入車は安くならないのか」というのは、おそらく大多数の方が疑問を持つところだろう。実は、欧州車にかかる関税はすでに取り払われており、現状が安くなっている状態なので、これ以上は安くならないのだ。関税における不平等をなくすのも、今回の大きな狙いだったといえる。

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関税以外での合意部分

日本車や工業製品の関税撤廃に注目が集まった日欧EPAだが、実は関税以外の分野でも合意した多くの分野がある。以下の表2を参考にしてほしい。

日本酒やシャンパンといった名称を保護することで、知的財産の侵害を防ぐこと(地理的表示)や、動画のようなデジタルコンテンツに関税をかけない(電子商取引)、日本の公共事業の入札にEU企業も参加が可能となる(政府調達)など、さまざまな取り決めがなされた(表4に「交渉の焦点」)。

EU と日本の交渉焦点

EU と日本の交渉焦点(表4、朝日新聞より)

日本の農業はどうなる

EUからの輸入にかかる農産品の関税の多くが撤廃されることは、食料の多くを輸入に頼る日本にとって品目の価格や安くなり、家計が助かるチャンスとなる。一方、EUが日本の農産品にかけている関税はほとんどが撤廃されるため、近年欧州で人気の「日本食」の輸出拡大へのチャンスも膨らむ。日欧の産業にとって、同等のメリット、デメリットがあると言えるだろう。

日欧EPAの柱として注目されていた欧州産のチーズやワインは、協定が発効されることで関税がなくなり値段が安くなる。輸入ワインは価格の15%、または1リットル125円の安い方の価格分の関税がなくなる。1000円の輸入ワインなら約910円程度になるという計算だ。

チーズに関しては、カマンベール、モッツレラのような「ソフトチーズ」に関して、低関税輸入枠が設けられる。発効から1年目は年間2万トンを対象として、16年をかけて関税を段階的に撤廃していき、対象量も最大3.1万トンまで増やす。

牛肉は現在38.5%の関税がかかっているが、発効から16年目は9%まで下がる。ただし、豚肉や牛肉は輸入量が急に増加することによって、国内の畜産農家が打撃を受けるような事態に陥ったケースを想定してセーフガードを導入し、一時的に関税を引き上げる。

日本からの輸出で大きな焦点となったのがホタテで、協定の発効によって関税8%が8年目に撤廃される。人気の日本酒、緑茶、みそ、ブリは即時撤廃。意外かもしれないが、ドイツやイタリアでは盆栽が人気で、これらも即時撤廃となり、輸出の促進に期待が持てる。

セーフガードってなんだ?

ある特定品目の輸入が急増して国内産業が深刻な打撃を受けるおそれがある場合、一時的に関税を引き上げたり、輸入数量を制限したりする措置。乱用すれば自由貿易を妨げるため、一定期間後に解除するのが前提となっている。(引用:読売新聞より)

EU側の隠れたメリット

今回の日欧EPAによってEUが望む経済効果は、加工肉や乳製品の輸出が増えることで、最大180%(100億ユーロ相当)増える。また、化学製品の輸出が最大22%(30億円ユーロ相当)、電気機器の輸出も最大16%(6.5億ユーロ相当)の増加が期待できるとの試算を打ち出している(表4参照)。

EUと日本の貿易関係

EUと日本の貿易関係(表4、読売新聞より)

EUは現在、英国の離脱が決定するなど、加盟国の脱退が危惧されている。しかし、EPAによって加盟国が日本と有益な取引ができるようになることで、EUにとどまることのメリットが増える。

また、EUは自由貿易の推進を掲げており、自国第一の米国「保護貿易主義」をけん制する意味でも効果を持つ。今回のEPAを機会に、EUと米国が交渉を進めるも停滞中の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)を活性化させたいとの狙いもあるという。

まとめ

試験に出ることを前提にポイントをまとめると、以下の通りになる。欧州車はすでに関税が撤廃されていることなどは、正誤問題でひっかけとして出題される可能性も考えられるので注意したい。

  • 日本車の輸出にかかっていた関税が段階的に撤廃される
  • 欧州車の輸入関税はすでに撤廃されているので関係ない
  • 欧州産のワインは価格の15%か1リットル125円の安い方の関税を撤廃、チーズも低関税輸入枠を設けて16年かけて段階的に撤廃
  • 豚肉・牛肉はセーフガードを設ける
  • コメは対象から除外
  • 世界の貿易総額の3分の1をカバーする「メガFTA」
  • 19年中の発効に向けて最終調整中。課題となっているのは「個人情報データ持ち出し」「企業が輸出先政府から不当な扱いを受けた際の紛争処理」

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2017.08.09

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新聞社の記者をしています。仲間との起業を夢見て、これまでに学んできたノウハウを記しておきます。現在、主に結婚新聞や企業・団体向けの広報紙を制作していますが「こんな紙面をつくってほしい」とのご要望にも随時お応えしています。